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バイエルン国立歌劇場 【フィガロの結婚】

2010. . 18
Bayerische Staatsoper
W.A.Mozart "Le Nozze di Figaro"

2010.3.14 Sun 18:00

Il Conte di Almaviva・・・・・・Michael Volle
La Contessa di Almaviva・・・・Barbara Frittoli
Figaro・・・・・・・・・・・・・Erwin Schrott
Susanna・・・・・・・・・・・・Laura Tatulescu
Cherubino・・・・・・・・・・・Kate Lindsey
Bartolo・・・・・・・・・・・・Christoph Stephinger
Marcellina・・・・・・・・・・・Heike Grötzinger
Basilio・・・・・・・・・・・・Ulrich Reß
Don Cruzio・・・・・・・・・・・Kevin Conners
Antonio・・・・・・・・・・・・Alfred Kuhn
Barbarina・・・・・・・・・・・Elena Tsallagova

Inszenierung・・・・・・・・・Dieter Dorn
Musikalische Leitung・・・・・Juraj Valcuha



久々の更新になります。1か月ほどほったらかしですみませんでした。この間、オペラなしのスペイン、ポルトガル旅行に行ってパスポートを盗まれるという災難にあい、ゴタゴタしていました・・。



さて、この公演はミュンヘン2日目。前日の「セヴィリア」に続いて立ち見席だけど、3階席なのでわりと良く見える。視界は上手が若干見切れるがほぼ全体を見渡せる。このプロダクションは、数年前の来日公演の時に持ってきていたディーター・ドルンの演出。その時は金欠で(まだまだ子供だったし)とてもじゃないけど行けなかった。確か指揮はメータ、トレケルの伯爵、ターフェルのフィガロ、コッホのケルビーノ、ローテリングのバルトロだったとの記憶がある。

今回のキャストは来日公演ほどではないが、若手を中心としたなかなか豪華な歌手陣。フリットーリ、シュロットといったスター歌手以外にも、名前は知られていないが実力のある歌手もちらほら。

この公演は「フィガロの結婚」というより、「アルマヴィーヴァの災難」という題名に付け替えてもよさそうなぐらい伯爵が中心の舞台に仕上がっていた。4幕の幕切れでは伯爵が舞台中央で「これでおしまい!」みたいな仕草をしていたことから、このオペラ全体のストーリーテラーのような印象を受けたということもあるが、何よりもフォッレの演技、歌唱の存在感によるところが大きい。チューリヒ「ラ・ボエーム」のDVDではマルチェッロを歌っていて、そのディスクでは荒っぽい声という印象だったが、実演に触れて見ると貴族的な落ち着きのある声と、コミカルな演技の両方を巧くこなす実力のある歌手だということが分かった。すごくハンサムというわけではないが、長身で舞台映えするということも視覚的には大きなプラス要素。

フリットーリは期待通り、ふくよかでスケールの大きい伯爵夫人を歌い、演じていた。特に3幕のアリアはメロディの流れにppとfを自然に織り込み、至高の美しさだった。伯爵夫人にしてはずいぶん若い外見と思わないでもないが、原作の設定ではまだ30歳前後ということなので、それには合致する舞台姿。でもフリットーリの実年齢は43歳らしい!そうは見えない美しさと若さを保っている。歌唱的にはそろそろ一番いい時期に差し掛かるのだろうか。現代最高のソプラノの1人だと思う。高音の跳躍で1か所無理をしているような声に聞こえた個所があったが、それでも全体的には文句のつけようがない出来。声を大事にして長く歌ってほしい。

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豪華なシャンデリアが輝くロビー


今、世界中で引っ張りだこのシュロットは深みのある声が魅力的。彼は喋るような自然な歌唱を目指しているのだろうか、しばしば歌うというより語るように台詞を言うことがある。これ自体は面白い試みだと思うが、やり過ぎてオペラなんだかつぶやきなんだか分からなくなってしまうことがある。声を張って歌ってほしいところでもそれをやってしまうのでもどかしいと感じることも多々あった。それに加えて台詞や歌の初めの部分が不明瞭なことが多く、歌詞がよく聞き取れないこともあってとても残念。演技は自然で巧く、アリアでは朗々としたバスを聴かせてくれてよかったんだけど・・・惜しい!

スザンナを歌ったタトゥレスクは、前回のウィーン国立歌劇場の来日公演「コジ」でデスピーナを歌っていた歌手。今回もスーブレット役での登場だが、このような役によくあった声をしている。しっかり者の小間使いの演技も板についていて、アンサンブルでも全体をよく引っ張っていたが、ソロになるとすこし弱い感は否めない。他の歌手と比べると声量がやや乏しいこともあるし、メロディの起伏に上手く強弱を乗せられていない個所も見受けられ、あまり個性のないソロになってしまっていた。4幕のアリアは聞かせどころにもかかわらず、そのような感想を持ってしまったので、なんだか勿体ない気がする。

伯爵夫妻に次いで感銘を受けたのがケルビーノを歌ったアメリカのメゾ、リンゼー。メトのヤング・アーティスト・プログラムに参加し、アメリカを中心にキャリアを積んでいる若手歌手。メトのライヴ・ビューイングの『ホフマン』でガランチャの代役でニクラウスを歌って成功を収めたという。そちらの映像もぜひ見てみたい。淀みのない透き通った美しい声と、長身でスラっとした体格、そして切れ目の美少年らしい容姿が、思春期に差し掛かった脆くも危うい少年ケルビーノにぴったりだった。これからズボン役を中心に人気が出るんじゃないかな、と思える期待のメゾだ。

バルトロはやや弱かったものの、そのほかの脇役歌手も手堅く安心して聴けた。特にバジリオのレスは、慣例的にカットされる4幕のアリアも見事に歌っていた。マルチェリーナのアリアはカットされていた。

飛び道具的な破壊力があったのがアントニオを歌った(というより演じた)クーン。60代か70代か、とにかく相当なベテランだが、舞台を裸足で、まるでぜんまい仕掛けのおもちゃみたいにチョコチョコ歩く姿は大きな笑いをさらった。歌も殆ど歌ではない語りのようだったが、この役ではその方が話のわからない酔っ払い親父の感じが出ていい。3幕では彼が出てくるだけで笑いが起こるほど。

ドルンの演出は時代設定は変えていないが、装置は最小限に抑えられ歌手の演技にゆだねられているところが大きい。その点では今回の歌手たちはみんな芸達者だったのでよかった。1幕から3幕までは椅子やベッドなどの家具と、色のついた扉やカーペットがあるが、4幕では舞台は一面真っ白。床は大きなシーツのような布で覆われていてそれ以外は何もない。本来、漆黒の闇が支配する夜の庭が舞台だが、ドルンは全く逆に眩いばかりの白が支配する舞台に変えていた。白は潔白、そして何色にも支配されていない色ということで、身分もヒエラルキーもない原初状態の人間を現しているのだろうか。確かに4幕では各登場人物が肩書ではなく、ただの男と女という立場で各自の感情をぶちまける幕と言えるから、そのことを象徴的に視覚化したのかもしれない。

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3幕の舞台


指揮は若手のValcuha。ブラチスラヴァで指揮を学んだとプロフィールに書いてあるからスロバキア人だろうか。何人であれ、よくオペラを知っている指揮者だな、と感じた。冒頭の二重唱からアンサンブルがずれてひやひやしたけど、それは恐らく発音が遅いシュロットのせいだろう。全体的には歌手とオケの両方を見事に融合させ、確固としたアンサンブルを作り上げていたし、落とすところはスッと引いて出すところは出す、思わず膝を打つような見事な音楽づくりだった。こういうのは劇場たたき上げの職人的指揮者に多いタイプだが、彼は実際はどうなのだろうか。ボローニャ、フェニーチェ、ベルリン・ドイチェ・オパーなどの中堅歌劇場のみならず、オスロ・フィルやピッツバーグなどのシンフォニーオケも指揮しているみたいだからオペラとシンフォニーを両立しているようだ。彼もこれから期待できる若手の一人だと思う。

昔、どこかで「退屈な『フィガロ』上演はありえない。どんな公演でも楽しい」という趣旨の文章を読んだことがある。確か小澤塾のパンフレットの中で、海外の音楽研究家が書いていた文章だったと思う。これは作品の秀逸さを表現した、モーツァルトとダ・ポンテへの賛辞の言葉だが、例えそうだとしても今回のように演技、歌唱共に巧みな歌手が揃った『フィガロ』に出会った時の喜びはひとしおだ。また、名前が世界に知られたスター歌手だけではなく、実力のある若手歌手、指揮者に出会うことができるのもいいことだ。わざわざミュンヘンまで来た甲斐があったというものだ。

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comment

keyaki
豪華キャストですね。
舞台は、新国のホモキのフィガロに似てますね。もう白が薄汚れてきてますが、来シーズンまた再演ですね。もう5回目ですから、行く予定にはしてないんですが.....

パスポート災難でしたね。ポルトガルでですか...
私は、パレルモでひったくりにあって、パスポートを盗られましたが、そのときは、ローマの日本大使館に行って再発行でしたから、大変でした。
数年前、娘がフランスの空港でバッグからポーチを抜かれてパスポートを盗られましたが、そのときは、空港ですぐに再発行してくれて助かった...と夫が言ってました。父親がついていながらしょうがないですよね。

私もイタリアからスペイン、ポルトガルと旅行したことがあります。当時ポルトガルは観光ビザだと3日しか滞在できませんでした....今は、ヨーロッパが一つになっていろいろ便利になってますね。
2010.04.24 13:37
コーノス
keyakiさん

パスポートの件、自分も再発行は万事うまくいったのでよかったです。イタリアに住んではいるものの、ヴェネツィアは他の都市(特に南)に比べて圧倒的に治安がいいのですっかり油断していました。今ではEU間の移動なら、電車でもパスポートチェックがあったりなかったり。とにかく便利です。

新国の「フィガロ」はまだあのプロダクションなんですね。初めて見たときはなかなか斬新でしたが、あの手の演出はあまり長生き出来ないような気がするのですが・・・。でもレガッツォが出るようですね。お気に入りのバスの一人なので、僕は行けたら行きたいと思っています。

2010.04.30 23:36

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