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パリ・オペラ座(バスティーユ) 【ウェルテル】

2010. . 11
Opera National de Paris (Bastille)
J.Massenet "WERTHER"

2010.1.17 Sun 14:30

Wherther・・・・・・・Jonas Kaufmann
Charlotte・・・・・・・Sophie Koch
Albert・・・・・・・・Ludvic Tézier
Sophie・・・・・・・・Anne-Catherine Gillet
Le Bailli・・・・・・Alain Vernhes
Schmidt・・・・・・・Andreas Jäggi
Johan・・・・・・・・Christian Tréguier
Brühlmann・・・・・・Alexandre Duhamel
Kätchen・・・・・・・Olivia Doray

Mise en Scéne・・・・・・Benoît Jacquot
Direction musicale・・・・Michel Plasson

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かつてフランス革命で襲撃された、あの牢獄あったバスティーユ広場に1989年にできた「オペラ・バスティーユ」は内装、外装共にとてもモダン。今ではオペラ公演はほとんどがこのバスティーユで行われており、古いほうのガルニエは主にバレエやバロック、古典派のオペラ中心に上演している。どちらも「パリ・オペラ座」ということになっている。

こちらは開演約1時間半前から当日券を販売しており、学生優待などもないので老若男女長蛇の列に並ぶことになる。ただウィーンなどと違うのは待ち列が野外だということ。一応屋根の付いているところから列が始まるので早く並べば雨でも濡れないが、この時期だとパリの寒風が容赦なく突き刺さる。

この時は初めてだったので、念のために10時半ごろからならびはじめて12番目だった。(14時半開演なので)13時に買えたが、いくら晴天だったとはいえ、1月のパリで約2時間半、外で待つのはかなりつらいものがある。寒さは何よりも足から体を蝕み始め、どんどん体温を奪っていく。暇つぶしのための本はたっぷり持っていったから時間をつぶすのには問題なかったが、最後の方には手袋をしていても本が持てないぐらいに手が悴んでしまった。靴に入れるホッカイロが必要だと思った。2時間半待って暖かいロビーに入って、チケットが買えた時の喜びは本当にひとしお。それでも立ち見(€5)だからこの後もずっと立ちっぱなしなのですが・・・。

劇場自体は規模がかなり大きく、立ち見席はウィーンと同じく1階最後方にあるけど、ウィーンとは比べ物にならないほど舞台から遠い。2階席のせり出しにすっぽり覆われているので音響もあまりよくないが、舞台全体がちゃんと見えるのでまあいいでしょう。

立ち見席というのが社会の縮図を見ているようで面白い。「オペラが好き=ブルジョワ、インテリ」みたいなのでは決してないことがよくわかる。近くのスーパーに買い物に行く恰好みたいなおばちゃんもいるし、休憩時間に持参したパン(もちろんフランスパン、バゲット)をむさぼりながらオペラのアリアを鼻歌で歌ってるおじさんもいる。

立ち見席から平土間に移ろうとするおじさんおばさんと、係員のいたちごっこは見もの。開演ギリギリになって立ち見席からするりと柵を抜けて1番高い席にちゃっかり座っちゃう。でも暗くなるギリギリにその席の持ち主が来て「そこ俺の席だよ」とか言われて「あぁ」ぐらいしか言わないでのこのこと立ち見に戻ってくる。

しかし、そこで諦めないのがパリの紳士淑女。暗くなって指揮者入場と同時にまた平土間入場を果たす。上手く座れる人もいれば、予想以上に暗くなっちゃって足元が見えなくてうろうろしてるうちに係員に引き戻される人もいる。フランス人。パリジャン・・・。

イタリア人同様、上演中にうるさいのもフランス人の特徴。オペラをあまり見慣れてないのか、「愛している!」とか「俺はここだ!」みたいなちょっとオールドファッションドな台詞が出てくると「なんだあれへんなの」みたいに笑ってるいい歳したオッサンが立ち見席にいた。そりゃマスネは母国語だから変に聞こえるかもしれないけどいちいち騒ぐのは中学生じゃないんだからやめてほしい。そんなことがあると前の客に「シー!」っとやられたり、休憩時間に口論になったりするのである。議論も自己主張もエゴも激しいフランス人・・・。

フランスのコンサート、オペラのプログラム売りは叫ぶ。「ポーギゥラーン」って最初は何言ってるのかと思ったが、どうやら「プログラム」らしい。他の国ではこんなの見たことないが、パリではシャンゼリゼでもオペラ座でもシャトレでもプログラム売りは叫ぶ。フランスの伝統なんでしょうか?

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せっかくフランスに来たし、ってことで奮発してシャンパン


さて、オペラ自体はあの有名なゲーテの「若きウェルテルの悩み」がベース。疾風怒濤(シュトルム ウント ドランク)そのものといった感じ。原作はもちろんドイツなんだけど、マスネの手によってこてこてのフランスオペラに仕上げられている。僕はフランスの、特にマスネの説明しようのないぐらい微妙で美しい音楽がたまらなく好きです。

公演そのものもなかなか完成度が高くて、満足できるマスネを聴かせてもらえた。プラッソン指揮のオペラ座管は作品の様式にぴったりはまっていた。フランス音楽特有の微妙なニュアンス、しなやかさなどが自然に出ていて、やはり「土地に行ったら土地の物」というのが一番だなぁ、と感じた。特にガルニエ、シャトレの公演を聞いた後に。

タイトルロールを歌ったカウフマンがメランコリックすぎるぐらいメランコリックなウェルテル像を確立していて素晴らしかった。この役はロマンティックで夢見がちという解釈も結構あるが、この演出ではストーカーに近いちょっと危ないぐらいシリアスな人間になっていた。カウスマンの演技と、その重めの声質がそんな演出家の解釈と巧く融合していたと思う。それにしてもカウフマンはいい声をしている。とくにドン・ホセとかウェルテルみたいな役が巧い。

シャルロッテのコッホは序盤、存在感があまりなかったが3幕からはダイナミックかつ繊細な歌唱を聴かせてくれた。とくに特徴のある声ではないが、発声が綺麗で聴いていて気持ちがよかった。

アルベールを歌ったテジエは最近売れっ子のフランス人バリトン。しかし小ぢんまりとおさまってしまい、可もなく不可もなくという印象だった。小柄なせいかどうかは定かではないが、声も小粒。それでもけっこうイケメンだから、こういう人材が現代のオペラ界に必要とされているのか。

Vernhes, Gilletをはじめ、脇役の歌手もかなりしっかりとしていて良かった。やはり母国語のオペラだと座付きの歌手もやりがいがあるといったところか。ヨハン、シュミッドの三枚目コンビも余計に出すぎないしっかりとした個性を持って演じていて感心した。

Jacquotの演出はプレミエながら珍しくオーソドックスなもの。しかし先ほど述べたように人物にしっかり味付けがされていたし、舞台装置が息をのむほどに美しい。1,2幕はアンソールの骸骨の絵の背景にあるようなぼんやりとした曇り空が背景で、照明によってそれが夕焼けになったり青空になったりする。1幕では手前に小屋があり、2幕は高台の上の広場のようなところが舞台。モンマルトルの丘の上にいるよう。

3幕は幕が開いた瞬間ため息が漏れてしまった。ハンマーショイの絵の世界がそのまま舞台上で具体化されていた。ストレーレル演出の「フィガロ」の3幕のような奥行きのある部屋の片隅にアップライトピアノ、そして窓から漏れる日光。素晴らしかった。個人的には元々の設定から大きくはずれず、それでいてスパイスが効いていたり、絵のオマージュがあったりする、単純に美しい!と思える演出が好き。魔女がラジオ体操したり、公爵がリムジンに乗ってたりするのも否定しないけど、やはりね・・・。

4幕はうって変わって、暗闇に包まれた舞台の中心に正方形のウェルテルの部屋がポツンとあるだけ。空間が凝縮されていてすっとドラマに引き込まれる。3幕の広大な部屋と対照的なところも印象づけられる。

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久しぶりに単純に「いい!」と個人的に思える演出に出会った。公演が終わるころには空が暗くなりはじめていた。

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(フランス人に対して差別的に思われる文があったかもしれませんが、あれは決してネガティヴな感情ではなくて親しみと敬意を込めて言ってるだけなのであります。その辺りをくみ取っていただければ嬉しいです。)


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comment

keyaki
ルッジェーロ・ライモンディは、ガルニエには出演しますが、バスティーユには、絶対、本当に絶対に出演しません。理由は謎.....1989年の杮落しガラコンサートには、出演してるんですけど。

>Benoît Jacquot
《トスカ》を撮影した時は、オペラには全く興味がないというか嫌い....なんて言ってましたが、オペラの演出家としても成功してるんですね。
2010.03.13 20:40
カンリニン
ライモンディ・・・バスティーユに出ない理由は分かる気がします。モダンすぎるから?それとも政治的な理由でしょうか?その辺は分かりかねますが。

そういえばジャコはあのゲオルギュー&アラーニャのオペラ映画「トスカ」の監督でしたね!すっかり忘れていました・・。あの映画は途中で録音シーンを混ぜたり中途半端であまり好きではなかったのですが、今回の「ウェルテル」ではとても好感が持てました!

今はミュンヘンに「セヴィリア」と「フィガロ」を見に来ています。なるべく早く更新します。
2010.03.16 02:11

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